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レースレポート

2023.9.11

悲願であった『優勝』に輝く集大成となった6時間!ST150 6時間耐久レース

レース名 2023 SUGO ST150 6時間耐久レース
開催日 2023年8月13日(日)
開催場所 スポーツランドSUGO(宮城県)

ドライコンディションの予選で2番手タイム

スプリントレースで多く採用されるグリッドスタートは、スタート位置にいてマシンにまたがり、周囲の状況を把握しやすい。一方で耐久レースで多く採用されるル・マン式スタートはコースを挟んで反対側に整列し、ダッシュしていってマシンにまたがるので周囲の把握がし辛い。トップグリッドもしくはなるべく上位の位置にいる方が有利だと言える。予選でのタイムは非常に大きな意味を持つのだ。
6時間という長丁場の耐久レースであるため、序盤の順位は挽回が可能とも言えるが、転倒など修復が必要となるトラブルは避けたいので、上位で予選を終えたいのが本音。その点ではVesrah Racing TEC2&YSSにとって「期待通り」の展開となった。予選の時間は30分。決して長くはない。遠藤選手と福田選手が担当して走行をし、2番手タイム。迎える決勝ではスタートしやすい位置を獲得できたと言って良い。
また一方で予選は「決勝を見据えての戦略作り」にも使われる。何せベテランライダーが3人そろっているので、タイヤが消耗してからもタイムの落ち幅を小さくできる。ベストタイムでの2番手は、決勝に向けて明るい材料となった。

ホールショットからレースを牽引

いよいよ決勝レースのスタート。2番グリッドから必勝を期すVesrah Racing TEC2&YSSは画期に満ちあふれていた。スタートを務めたのは遠藤選手。一日ドライコンディションが見込まれる中、チームトップのタイムを出す遠藤選手で一気にトップを狙う作戦だ。するとここでトップグリッドにいた#27YUE Racing&RH松島にアクシデントが起き、ピットへ移動していった。他チームとは言えアクシデントを目の当たりにし、集中力が心配された。
しかし遠藤選手はさすがに百戦錬磨のベテランだった。平常心でダッシュしてマシンにまたがり、ホールショットを奪って見せた。しかし、そのままの独創は許してもらえない。3台がピタリとマークしてきて、4台によるトップ争いが繰り広げられる。トップスピードに大きな差はなく、ライダーの技量も拮抗している中での争い。スリップストリームを使い合う展開は頭脳戦となる。一時はトップに出る遠藤選手だったが、その後は我慢。いたずらにトップへ出ればスリップストリームを使われ、相手の燃費を助けることになる。
何周も続くこの頭脳戦は、バックマーカーの出現でさらに難解かつ迅速な判断を必要としていく。インかアウトか、同じコーナーで抜くか次まで待つか、などなどさまざまな判断を強いて来るのだ。バックマーカーの数、タイミングによって状況は一変する。
遠藤選手はバックマーカーを活用していく。4台がひとつのグループではなくなっていき、#150クラブMプラス・ST150愛好会とののマッチレースへと変わっていく。そして一方でクラスは別ながら予選トップタイムを叩き出した#27が、猛烈な追い上げを見せている。当面はこの2チームの動きを見ながら、今後の作戦を考えていくことになる。

我慢比べとなった最初のピットイン

耐久レースの難しさは、短時間の速さに縛られてはいけないことだろう。速いタイムが続いても、それだけで耐久レースは勝てない。「どれだけ続くか?」が大切なのだ。タイヤの消耗、ガソリンの燃費、ライダーのスタミナ、これらが許すかどうか。それを見極めながら自分たちの作戦を変更していくのだ。
トップを走るVesrah Racing TEC2&YSSは、どうしても2位を無視できない。驚異的なペースで追い上げて来る#27は別クラスなのでマシンの燃費が悪くタイヤの保ちも良くない。ピットインの回数が多くなるとの予想だ。一方で2位の#150は同じクラス。どれくらい保つのかがわからないのだ。
レース前の予定では一人90分ほどの走行で交代となっていた。しかし、スタートから90分を過ぎてもピットインに備える様子はない。2位のチームが入らないからだ。練習走行の中で、予選の中で、燃費の計算はしている。遠藤選手のスタミナも信頼している。チームとしての自信はある。だが、余裕は削られていく。10分、20分と過ぎる中で緊張が高まっていく。相手にどれほどの余裕があるのか? 不安が湧いて来る。レースが順調に進んでいるだけに、先にピットに入るのは不利になる可能性がある。

スタートから2時間になろうとしている時に、それは起きた。コース上で転倒、救急車がコースイン。当然だがペースは落ちる。コース上にいる全ての車両がペースを落とさざるを得ない。ここで一気に動く。次のライダー・福田選手が即座に準備を整えた時には、ピットスタッフの準備は完了している。ピットイン。ガソリンを給油し、ライダーを交代して走り出す。思ったよりもガソリンには余裕があり、この後のピットインを減らせそうだった。求めている「優勝」への道筋が見えたようなピットインだった。

堅調で快調な走行を重ねる

交代した福田選手は速くて安定したライディングだった。いや、これは3人のライダーに共通した部分だろう。しかも対応力も高いのだから、作戦はアバウトに作っておいて、その場に応じて変化させることができるのだ。
一気にではなく、少しずつ確実にトップの座を固めていく。これは遠藤選手にも感じた印象。実はこのST150クラスのトップタイムを記録し、一周の速さでも強さは見せていた。しかしそのイメージを塗り替えるほど安定していて、強い。他クラスのチームの方と話した時も「強いね、本当に強い」と言われたほどだった。

佐藤選手がスタンバイしていく。最も練習時間がなく、マシンに慣れていない。短めの時間になる。それでも多くのチームにとってベストタイムになるタイムで周回している。本当に揺るがないライダー陣なのだ。

感動のチェッカー、歓喜の表彰台!

最後のライダー交代が行われる。チェッカーまでの走行を任されたのは遠藤選手だ。30秒以上の差をつけている状況なので、アタックするというよりも安定してゴールまで走り続けることが優先。この6時間でタイヤ交換はしていない。当然だが消耗はしていて、グリップ力も落ちている。気を抜くことなどできないのだ。
残り時間が20分を切ると、モニターを見つめるチームスタッフ達は祈りにも似た気持ちになる。ここまで来たら、後は「不運」という魔物が来ないことを願うだけだ。耐久レースはライダーももちろん大変なのだが、チームスタッフも大変だ。サインボードエリアではずっとタイムを計測し、サインボードを出し、ライダーを鼓舞する。ピット内ではレースの状況を把握し、何か作業が生まれるかをチェックし、作戦を打ち合わせる。本当にチーム一丸となって、耐久レースは成り立っているのだ。
レースの残り時間が10分を切り、5分を切ると少しだけ安堵の表情になる。チェッカーの瞬間を見ようと、サインボードエリアに集まる。そしてついに、ついにトップでチェッカーフラッグを受けた。喜びを爆発させる。握手をし、ハイタッチをし、お互いのがんばりを讃えながら喜びを味わう。Vesrahの田村会長、折田社長もその輪に入り、ともに喜ぶ。最高の瞬間である。一方でチェッカーを受けた遠藤選手は、チェッカーフラッグを渡され、優勝の実感を噛み締める。車検場へと向かえば、みんなが出迎えてくれる。カメラを見つけると、喜びの表情とポーズを送ってくれる。

悔しい想いをした翌日だけに、その喜びは一際大きなものとなった。乗る表彰台の位置も、一番高く真ん中になった。常に求め続ける「優勝」は、何度味わっても特別なもの。悔しい想いもまたレースの醍醐味であることは間違いない。しかし、この歓喜の瞬間もまたレースの醍醐味である。「やっぱり最高ですね」この言葉を投げかけて否定する人などいないだろう。素晴らしい笑顔が弾けた。