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レースレポート

2023.9.11

「まさか」に襲われつつも最後まで“らしさ”を貫いた4時間 – JP250 4時間耐久レース

レース名 2023 SUGO JP250 4時間耐久レース
開催日 2023年8月12日(土)
開催場所 スポーツランドSUGO(宮城県)

雨に見舞われた予選で苦しむ

スプリントレースと耐久レース。そこに存在する“難しさ”の種類は大きく変わらないのかもしれない。しかし、耐久レースは時間が長くなるほど人にもマシンにも過酷になっていくことは間違いない。そしてスプリントレースは一周のタイムをより厳しく追求する必要に迫られる。こう考えると、4時間の耐久レースは若干スプリントレースに寄りつつも耐久レースの過酷さを兼ね備えるレースだと言えるだろう。増して天候が変化していく日は、状況の判断や対応を迫られることになり、難しさも加わっていく。これらを味方にできるかどうか、も耐久レースの結果を大きく左右する要素となる。

当日の朝に行われた予選は、Vesrah Racing TEC2&YSSにとって厳しいものとなった。雨が降り、フルウエットの路面で行われた予選は11位に沈んだ。優勝を狙うには、少し厳しいグリッド順位だと言える。スタートから序盤に順位を上げて、しっかりとトップ争いに食い込まねばならない。

勝負をかけた序盤の作戦は成功! 運を味方につけてポジションアップ

ポジションアップを義務付けられるスタートライダーは、直前で佐藤昭仁選手に変更された。セオリーから言えば、最もラップタイムが速いライダーが務めることが多い。豊富な練習量があり、経験も豊かな福田選手が務める予定だった。佐藤選手は今回のマシンに乗った回数が最も少ないのだ。
この賭けにも似たライダー変更には理由があった。「天候は雨から晴れ、路面はウエットからドライに変わる。ドライの時に体重の軽い二人が走った方が有利」だからだ。そしてもうひとつ「佐藤選手の調子が良いだろう」という計算も働いたようだ。結果として、この決断はレースへ大きな働きを持った。

ル・マン式で行われたスタート。佐藤選手は緊張を感じさせず、順調に走り出す。そして第1コーナーへの進入でラインを変えた。ウエット路面であるがためか、イン側がぽっかりと空いていた。そのスペースへ飛び込んでいく。「空いていたスペースを後続に使われたくなかった」と佐藤選手は意図を説明してくれた。ポジションアップを狙い過ぎて、逆にポジションを下げる結果を避けたと言える。
11番手でのスタートから、一気に3つほどポジションをアップ。その後は5周ほどで3番手となり、トップグループに食らいつきながらのレースを展開していく。路面はウエットからドライへと変化している最中だった。大勢が通るラインはドライになり、外れればウエット。そんな難しい状況が序盤のレースを支配していた。佐藤選手は巧みに駆け抜けた。大きなミスもトラブルもなく、予定の約80分を走り抜き、福田選手へとマシンをつないだ。

作戦は的中して熾烈なトップ争いを展開する

耐久レースにあって、スプリントレースにあるもの、それはレース中のピット作業だろう。給油をしてライダー交代をするのがベースで、この作業にミスが出れば数秒の遅れを作ってしまう。1秒未満のタイムを詰めるのに、ライダーは大きな集中力とリスクを使うのだ。特にラップタイムではライバルを圧倒できていない状況では、非常に大きな要素となる。
この点で、Vesrah Racing TEC2&YSSは強く、アドバンテージを持っていたと言っても良いだろう。みんなが協力して、ミスをせずにピット作業を進めた。

迅速な給油とライダー交代によって走り出した福田選手は快調なペースで走行を重ねていく。そして、トップを捉えることに成功する。もちろん、簡単に抜ける相手ではない。激しいトップ争いが繰り広げられていった。

福田選手の走行タイミングでは、上位を走るチームはレインタイヤのままで走行している。ドライ路面では最後まで保たない。タイヤ交換を入れる、もしくは大きくタイムを落として走行することになる。もちろん、選択するのはタイヤ交換を行うことだ。なるべく早く作業を終わらせることは、レースの順位に直結する。タイヤの空気圧を調整し、ウォーマーをかけるだけでなく、必要な工具類もトレーに入れておく。取り出しやすいように、考えて準備をしているのだ。

準備が整い、福田選手がピットイン。待ち構えるスタッフ達。タイムキーパーはあと何秒でやって来るのかまで計測して全員に伝えているからこそ、集中力をマックスにして待っていられるのだ。

作業が行われている間に走ってきた福田選手とこれから走る遠藤選手で情報交換をする。走りながらの通信ができないので、ここでの情報共有は大切なこと。遠藤選手はチームのベストラップを記録しているエース。ここが勝負所になる。スタートを担当した佐藤選手は給油などの作業を手伝う。まさにチーム一丸となったピット作業だった。

2位に30秒以上の差をつけるも……残り10分の不運に見舞われる

遠藤選手はベテランのライダーである。ただラップタイムを上げるだけでなく、レースの流れを読み、必要な要素を理解して走る。ピットストップの兼ね合いもあり、2位に30秒ほどの差をつけた後は、詰められれば離すという展開。常にいる周回遅れをなるべくスムースにパスし、ラップタイムを維持していく。大きく引き離すことはできないが、大きく詰められることもない。ピットストップはラスト1回。トラブルなく淡々と走りきった。

ラストを任されたのは福田選手だった。予定通りのピットストップを滞りなく終え、30秒以上の差をキープしながら最終盤へと突入していく。残り30分という時間になれば、この差は大きい。一周で1秒以上を常に縮めなければならないからだ。転倒のリスクも考えれば、アドバンテージの大きさは計り知れない。

堅調に周回を重ねていく福田選手のライディングには、安心感すら覚えるほどだった。残り20分、15分と過ぎていく中で、優勝の二文字が頭に浮かんだ。しかし……。

残り12分もしくは11分だっただろう。福田選手が緊急でピットに入ってきた。シフトがチェンジできないというトラブル。対応力が抜群である福田選手でも、シフトチェンジなしでの走行は無理だった。予想外のトラブルに原因の究明と対処作業が30秒で終わるはずはない。いや、むしろ対処できたことが素晴らしいことだと言えるかもしれない。この結果、トップを明け渡した上で、1週の差をつけられてしまった。

総合3番手、クラス2番手でのゴールは十分に素晴らしいもの。3人のライダーが高い次元で対応力を持っていたからこそ、出走順序を入れ替えることができ、トップ争いを牽引することができた。しかし、つかみかけていた優勝は目前でスルリと逃げてしまった。悔しい。言葉にならない。なんとも言えない雰囲気にチームは包まれた。その中で遠藤選手は「悔しいですけど、これだから耐久はやめられねぇっす」と言った。これもレースの醍醐味であり、真髄。この悔しさを次に晴らすべく、さらなる準備と精進を繰り返すからこそ成長があるのだ。

幸いにも、翌日にST150 6時間耐久レースが待っている。全員の目は翌日のレースへと向いた。悔しさは必ず晴らすのだと誓って……。