レースレポート
2023.6.7
デビューから開幕2連勝! それ以上の意味を持つチーム一丸の勝利!!
レース名 | 2023 MFJカップJP250選手権 第2戦 |
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開催日 | 2023年5月20日(土)・21日(日) |
開催場所 | スポーツランドSUGO(宮城県) |
全日本ロードレースと併催されているMFJカップJP250国内クラス。その開幕戦でデビュー&ウィンを飾った荻原羚太選手。第二戦となるスポーツランドSUGOでも勝利を飾り、無傷の2連勝となった。しかし、本当の喜びは隠された悔しさと苦しさの先に隠されていた…。
デビューウィンに隠された悔しさ
前戦のツインリンクもてぎでJP250の国内クラスでデビューウィンを飾り、これ以上ないほどの結果を残した荻原選手。SUGOの練習走行後に「良い結果の後のプレッシャー」について質問をすると、意外な答えが返ってきた。「確かに優勝で、うれしい気持ちはあったんですが、千田選手に負けてしまったので……」と、悔しそうな表情になった。
実はJP250は荻原選手が参戦している国内ライセンスのクラスの他に、国際ライセンスのクラスが存在する。表彰は別となるが、一緒に走ることになるため、トップであってもチェッカーを受けたのは僅差の2番目だったのだ。
自身がレース経験豊富なべスラの福田氏は「才能あふれる若いライダーの中でも頭抜けています」と評価する荻原選手の才能。そこに加えて、ライダーに不可欠な“強烈な負けず嫌い”も備わっているということだ。
ライダーの気持ちは、ご両親、そしてチームべスラレーシングTECH2&YSSのスタッフみんなが気づいていた。クラス2連勝はもちろんだが、国際クラスを加えた総合で「最初にチェッカーを受ける」ことが大きな目標となった。
目まぐるしく変わる条件との戦い
いよいよ始まったレースウイーク。荻原選手はスポーツランドSUGOを前年に一度レース参戦した経験があるのみ。どんどん走って、ライダーもマシンもデータを積み重ねていきたいところだ。
真夏を思わせる暑さとなった木曜日だったが、突然の雨にも見舞われてしまった。そしてレース前日も3回の練習機会があったが、曇り、曇り、雨とそろわない。路面がドライの時とウエットの時、それぞれのセットを積み上げていくしかなかった。特に金曜日のラスト走行枠は、多くのチームが走行キャンセルをしていた。「少しでも多く走っておきたい」というライダーの気持ちと「明日も雨が降るかもしれない」というチームの意向がマッチし、チームべスラは走行を決断した。これが今後に響くことになる。
雨の予選で2列目スタートを確保!
朝に予選を行い、最終レースで決勝を戦うJP250。どのクラスよりも先に行われるのは、JP250の予選だった。心配していた通り、天気は雨でウエットコンディション。上位をキープし続けていく荻原選手。前日の練習走行でつかんだことが大きかったと言える。
しかし、トラブルも起きる。マシンのスクリーンが曇ってしまったのだ。エンジンやラジエター類から発せられる水蒸気がこもってしまったのだ。コーナー進入で顔をオフセットし、前方の視界を確保しながら走ることで対応していくが、本来のタイムからは僅かに下がってしまう。
国内クラスで2位、混走となるため総合で6位という順位で予選を終えた。前には横江竜司選手、小室旭選手、中澤寿博寛選手といったベテラン勢が並ぶ。前戦でデッドヒートを繰り広げた千田俊輝選手も総合2位に入っている。経験が大きく影響を与えるウエットになれば、かなり強い存在だ。特に横江選手は地元ということもあり、ドライでもかなりの強敵となる。
予選後の荻原選手は落ち着いていた。「とにかく2列目を確保できれば、勝負ができる」と、最低限の目標としていた2列目グリッドのスタートを確保できたからだ。まだ14歳とは思えないほど、先まで見通して組み立てている。決勝もウエットになる可能性は捨て切れないため、スクリーンに穴をあけるなどの対応を周囲は急いだ。タイヤチョイスも最後まで決め切らず、外した状態で待つこととなった。
三つ巴の激闘となった決勝
「ドライがいいなって願っていました」と、レース後に笑顔で語ってくれた荻原選手の気持ちは天に届いた。迎えた決勝はドライコンディションとなったのだ。ドライ用のタイヤを装着し、しっかり煮詰めたドライセッティングを整えて決勝へと向かった。
シグナルが変わり、スタート。落ち着いた良いスタートを切った荻原選手は、ポジションを上げる。1コーナー2コーナーを回ったところで3番手付近、3コーナーの飛び込みで3番手をはっきりさせた。前を行くのは千田選手と横江選手。二人の国際ライダーを視界にとらえながらのレースとなった。
ここからのレース展開が14歳らしからぬクレバーさを発揮する。2位、1位、3位とポジションチェンジを繰り返す熱い展開だったが「スリップを使って一気に2台を抜くことができると確信しました」と、勝負所でのしかけをテストしていたのだ。
一時は4番手にいた久川選手に追い抜かれてしまい、前の2台に差をつけられてしまった。「唯一あせった場面でした」となったが、落ち着いて抜き返し、プッシュしてまた3台の戦いへと戻すことに成功。このことで「最後のアタックはいけると思いました」と振り返った。
運命のファイナルラップ。3番手で序盤のセクションを駆け抜ける。コーナー進入の勢いは良く、何度か“抜ける”と思わせたが、3位キープのままで最終コーナーへと向かう。そして、キツい上りでしかけがあった。トップを走っていた横江選手のスリップストリームを千田選手が活用し抜きにかかる。そこへ、千田選手のスリップストリームに入っていた荻原選手がさらに抜きにかかる。僅差でトップチェッカーを受けたのは荻原選手! 目標としていた「国際クラスを含めてのトップ」を成し遂げたのだ。クラス2連勝よりも大きな意味を持つ勝利だった。ウイニングランで思わずガッツポーズを作って喜びを爆発させた。
「最後のあの場所でしかけようと思っていました」と会心の勝利に笑顔になった荻原選手。周囲が感じたとおり、何度か抜ける場面があったという。しかし、しかけるのは「最後のあのポイント。その前でしかけたら抜き返される」と冷静に我慢をした。技術、気力、そして知力と全てを駆使しての勝利だった。
荻原選手はレースウイーク全体を振り返りながら、こう言った。
「あれだけ天気が変わっていく中で、対応してくれたみなさんの協力が大きいと思います」
ご両親、チーム、そして協力してくれた全ての人への感謝。その気持ちを背負い、これからも戦う決意だ。だからこそ目標は高まっていく。「クラス優勝を続けることはもちろん、国際クラスを含めたトップでチェッカーを受け続けたい」と。感動を与え、次のレースへの期待を高まらせてくれる、“特別なライダー”へと成長している。